太は両親の敵で

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太は両親の敵で

湯本蓮との関わりは特になく、兄弟だと感付いている節はない。』
雨宮葉月と口論になり、須藤歩を突き飛ばし、ヨシュア:レイリーに殴り掛かるも、翌日須藤歩には自ら謝罪している。口論の原因となった雨宮葉月の謝罪も受け入れている。(愛想は悪いが悪いヤツじゃない)』
バスケットが好きな様で、千寿栄太と休み時間にボールを奪い合っている。6歳年上の栄太に全勝。』
算数のドリルを1日2ページ進めている(宿題か?)』
敦の独り言のような走り書きを呼んで、ザンは気持ちが少しだけ和らいだ。
そして、他の生徒の資料とカルテも読み進めて行く。
そのうちに見えて来た。
雨宮源一郎と、カナン』、東雨宮』。
その3つが、両親の死に関わり、そしてこれから何か良からぬ事をしようとしているのが。
雨宮葉月、千寿栄太、須藤歩、愛倉破愛人は東雨宮関係らしいということもうっすら分かった。
ザンは、うんざりした。このサマーキャンプに。そして星村研究所そのものの存在に。
俺は、そのままカルテを持ち出し、次の日の昼。全員の荷物に忍ばせたんだ」
ザンの言葉に敦は真っ正面からザンを睨め付ける。
何のためにそんな事したんだ」
気に入らなかった」
何が?」
なにもかもだ」
ザンは苦しげな表情のまま呟く。
歩と葉月、栄太は両親の敵である雨宮一族だ。王子もそちら側だろうと思った。蓮は俺をすっかり忘れているし、レイチェルとレイ、敦は全てを知って俺たちを監視しているように見えた」
レイチェルとレイも?」
おそらくな。ヨシュアとしての仕事の一環だったんだろう?二人は冷静だったし、たまに俺たちのことを二人で話し合っていた。今思えばスカウト対象者として見定めている感じだった。」
それでカルテを」
葉月の呟きにザンは目を伏せた。
研究所も、星村孤児院も、あのど田舎の土地も、何もかもが我慢できなかったんだ。村の連中は俺を哀れみの目で見るだけだったし、研究所の奴らは実験動物でも見るような目をしていた。」
ザンの孤独と苦しみをあらためて実感する葉月。何も言えずにその横顔を見つめていると、
で?仲間との信頼にヒビが入った感想はどうだい?」
歩が楽しそうに笑いながら聞いてくる。
敦は軽く笑いながら歩を見た。
俺は今の今まで、12年前カルテをばらまいた犯人が許せなかった。俺の人生を狂わせた張本人でもある。でも、ザンの心情は理解できる。なんせ12歳だったんだしな。それにあの事件がなければ、俺は葉月と結婚していなかった。話を聞いた今はもう、ザンを責めるつもりも、恨む気持ちもないぜ」
その言葉に、栄太が大きく頷く。
ああ。それぐらいで揺らぐような関係じゃない。俺たちはサバイバルを乗り越えて、カナンを生き抜き、こうしてここにいるんだ。友だちでも家族でもないが、大事な戦友だ」
今まで黙って聞いていた栄太がきっぱりと言う。ザンは驚いた表情で栄太と敦を見た。
歩くん同じだよ。歩くんにも、私たちは同じ気持ちなんだよ。過去の過ちはザンや歩くんだけじゃなくて、それぞれあるでしょ?私にももちろんたくさんある。何も知らずにいろんな人を傷つけたし、私の存在そのものが誰かを苦しめていたことももう分かってる」
歩は悲しそうな顔で葉月を見つめる。
だから全て水に流して手を組もうっての?」

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